特別支援教育に携わる人なら一度は聞いたことのある「構造化」。
でも、どういう意味なの?どうやればいいの?
そんな疑問を持つ人のために、特別支援学校で実際に行われている「構造化」を紹介します。
構造化とは?
そもそも構造化とは何なのでしょか。
「構造化」とは、特に自閉症教育で重視されてきた教育方法で、アメリカ発祥のTEACCHプログラムが日本で紹介されたことをきっかけに、その導入と実践が学校現場で積極的に行われるようになったと言われています。
構造化は、生活や学習のさまざまな場面で、その意味を理解し、自分に何が期待されているのかをわかりやすく伝えたり設定したりするための方法で、特に「自閉症教育」の中では、従来から重視されてきた教育方法です。
自閉症教育における「構造化」というキーワードとTEACCHプログラム | 全国地域生活支援機構
簡単に言うと、自閉症の子ども向けに行われる、わかりやすくやるべきことを伝えるための支援方法ってことです。
ちなみに、子どもによって「わかりやすい伝え方」は異なるため、一人一人に合った構造化を考えるのが、教員の腕の見せ所です。

とはいえ、ベースとなる構造化のやり方はあるから、子どもに合わせてアレンジをするのがおすすめ!
なぜ構造化が必要なの?
答えは、自閉症の特性に聴覚よりも視覚優位であること、予定の見通しが立たないことに不安を感じやすいこと、一つ一つの要素を関連付けて全体的にとらえることへの苦手さ、があるから。
このような特性がある自閉症の子どもが落ち着いて学習に取り組める環境を用意するために構造化が重要なのです。
基本は自閉症の子どもに向けた指導ですがやってみると自閉症以外の知的障害の子にとってもわかりやすい支援になることがありますよ。(逆に刺激が多くなりすぎる場合もありますが)
どんな方法があるの?
今回は「国立特別支援教育総合研究所」の分類分けを使って紹介します。
時間の構造化
一日のスケジュールや一週間・一ヵ月の予定を表などの視覚情報として提示すること。

時間割やカレンダーもそうだね。

上のカレンダーは実際に筆者が活用していたものです。月の予定(行事や下校時間の変更)をイラスト入りで表示し、一日の終わりにシールを貼る。今日の日付を赤い枠(マグネット)で囲うと日付がわかりやすいです。

こちらも実際に活用した行事用のスケジュールです。イレギュラーな行事は、いつも以上に見通しがもてません。簡単に流れを紙に書いて見せるだけで、効果は絶大!終わった予定は線で消したり、シールを貼ったりします。
「時間の構造化」をすることで、先の予定の見通しがもてて安心したり、次の活動に自分から取り組むことができたりします。
子どもによって、文字や数字の理解度合は異なります。ひらがなを使うのか、漢字を使うのか、イラストを入れるのか、モノクロかカラーかなど、細かい点ですが子どもによってアレンジします。
物理的な構造化
学習する場所と食事をする場所を分けるなど、活動ごとに場所(環境)を用意すること。

音楽の授業は「音楽室」、体育の授業は「体育館」など授業ごとに場所を変えるのも構造化だね。
「物理的な構造化」をすることで、活動と場所を対応して把握できるようになり、その場所に行くだけで、活動に向けて気持ちを切り替えることができます。
「音楽室」で音楽をやるのは当たり前でしょ。と思われるかもですが、筆者の勤務校では児童数が増えるにつれて、音楽や体育を教室で行う必要がありました。今まで「音楽室」で行ってきた音楽を「教室」で行うというイレギュラーな出来事に、子どもたち(とくに自閉症児)はかなり混乱することとなりました・・・

今まで慣れていたことを変更することは、子どもにとって負担がかかることですが、予定表に場所カードを貼ったり、教室移動の前に写真を見せて伝えたりすることで、次第に受け入れてくれました。
活動の構造化
一人で作業ができるような机の配置や作業の手順を示すなどの工夫をすること。

作業の手順を写真入りの説明書で伝えたり、使う道具をわかりやすい配置に用意したりするね。

A4サイズ1枚程度で収まると、一目で終わりまで確認ができておススメ。イラストでも写真でも、子どもが理解しやすいものなら何でもよいです!
「活動の構造化」をすることで、教師がそばについていなくても手順を理解して、自分で活動を進められるようになります。

活動に取り組めていたら、必ず本人が喜ぶ方法で、褒めてあげて!
まとめ
難しく感じていた「構造化」が少し身近に感じられたでしょうか?もしかしたら、意識していないだけで、すでに構造化を実践していた!なんてこともあるかもしれないですね。
自閉症の子どもに有効だと伝えましたが、知的障害の子どもにも有効な場合もあります。支援のレパートリーの一つとして、ぜひ取り入れてみてください。
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