佐々木倫子の名作『動物のお医者さん』を読むべき理由

1987年から1993年にかけて連載された、動物のお医者さん。完結からかなりの時が経ちますが、今なお読む人の心を掴んで離さない名作です。

今回はそんな読む人に損をさせない名作、動物のお医者さんを紹介します。

作品の概要

1987年に白泉社「花とゆめ」で連載スタート。作者は佐々木倫子先生です。

札幌市にあるH大学獣医学部を舞台に、獣医師を目指す学生の日常を描くコメディ漫画。累計発行部数は2160万部を突破し、2003年にはテレビドラマ化されました。

あらすじ

佐々木倫子が贈る、国民的動物コメディー！
進路に悩む高校３年生・西根公輝（通称：ハムテル）。
抜け道に利用していたＨ大学構内で、
「般若のような顔の子犬」と怪しい教授・漆原に出会い、
彼の人生は大きく変わる･･･!?
シベリアンハスキーのチョビ、猫のミケ、鶏のヒヨちゃん他
個性的な動物と人間に囲まれた賑やかな日々が幕を開ける!!

新装版　動物のお医者さん １ | 書籍 | 小学館

読むべき理由

作品の独自性

獣医学部を舞台にした珍しいテーマ

主人公のハムテル(公輝)は、H大学の獣医学部生。獣医学部ならではの、動物を扱った授業や、医学的な実験などのエピソードが盛りだくさん。実験の手順は、面白エピソードとともに丁寧に説明されています。

しかも、舞台は北海道ということで、アルバイトで訪れる牧場の規模も大きい！

試験に合格するためあれやこれやと画策する姿や（学生みんなで一芝居打つことも笑）、大学構内に飼われた、研究用の動物たちのハプニングなど、共感できるエピソードから獣医学部の学生生活を垣間見えるエピソードまで！

個人的には、菱沼さんのエピソードや試験のエピソードがお気に入りです。

コメディとリアルな獣医の世界が絶妙に融合  

獣医という、動物の命をも預かる重要な職業。イメージからすれば、とてもシリアスな展開を想像してもおかしくありません。

ですが、この作品はどこか気が抜ける（アットホームな）、そしてクスっと笑える作品です。その理由は何か、

登場する動物のほぼすべてに動物の気持ちを代弁したセリフがつけられているのです。これがまた、本当にその動物がしゃべっているように見えるから、最高！フォントも相まって、笑えること間違いなしです！

ここで一部、家畜病院に連れてこられた動物たちの声をご紹介（第52話より）

「わーっ　ヤダヤダヤダーーッ」引きずられてきたダルメシアン

「こうなったらヤケじゃ　やったるでエ」噛みついてくるアライグマ

「あいつら獣医だぜ」「したっぱだけどよ」「やーね」待合室のみなさん

キャラクターの魅力

主人公のハムテル

本名は西根公輝（まさき）というのだが、「公」という字がカタカナの「ハム」と読めることから、友達からは「ハムテル」と呼ばれています。（ちなみに祖母は「キミテル」と呼ぶ）そんな彼の性格はというと、動じない落ち着いた性格で、基本は無表情。それだけ聞くと、冷たい印象や暗い印象を抱くが、周りの友達から頼られる存在で、たまに祖母や教授にいたずらをするお茶目な一面も。

また、ハムテルの友達、二階堂もかなりいい味を出しています。こちらは、ハムテルとは逆で、人や動物に振り回され、表情豊かなキャラクター。正反対な二人ですが、馬が合うようで、漫才のような掛け合いには笑ってしまいます。

チョビをはじめとする動物たち

動物のお医者さんを語るうえで、忘れてはいけない動物がチョビです。

ひょんなことから、漆原教授に押し付けられて、ハムテルの飼い犬となったチョビ。犬種はシベリアンハスキー。オオカミのような強面な表情ですが、チョビはおっとりした女の子。基本的には、優しく、ハムテルが忙しい時には、遊んでもらえなくても我慢する聞き分けのいい子。それが、食い意地だけは張っていて、二階堂からサンドイッチをもらうためにプレッシャーをかけ続けるのには笑います。

他にもハムテルの家には、猫のミケやニワトリのヒヨちゃんがいます。

ミケはなぜか関西弁のセリフがあてられる、強気なお姉ちゃん。狩猟本能バリバリで、庭のカエルとの格闘エピソードが印象的。

ヒヨちゃんは、西根家に来た時はかわいいひよこでした。が、成長した今では餌をあげるだけなのにバリケードが必要なほど立派に（笑）

個性豊かな教授や友人たち

個性豊かな登場人物にあふれる本作。大学教授だって、変わり者！

漆原教授。ハムテルにチョビを押し付けて、「お前は獣医になる！」と予言した男。この方は、エピソードが付きません。とにかく破天荒な性格です。

大学内をありとあらゆる方法で私物化していきます。銭湯にしていたのにはびっくり！

私は菱沼さんが一押しでした。ぺったんぺったん、試験管を洗ってくれる・・・

ストーリーの面白さ

獣医のリアルな知識が盛り込まれた日常エピソード  

獣医学の知識から、動物の習性、北海道の暮らしまで。くすっと笑えるエピソードとともに！

読んでいるうちに、獣医学に詳しくなれるかも！？

予測不能な展開と絶妙なギャグセンス  

個性豊かなキャラクターたちが、日々、思いもよらないハプニングを巻き起こします。

おしるこ事件やハムテルのおばあさんと近所の動物病院との因縁、菱沼さんの博士論文騒動などなど！

数多くの漫画を読んできましたが、これほど先の展開が読めない漫画はありません（笑）

コミック情報

動物のお医者さんには、4種類の形態で書籍化されています。

花とゆめCOMICS 全12巻

白泉社文庫　全8巻

愛蔵版　全6巻

新装版　全12巻

まとめ

いかがでしたか？

不朽の名作「動物のお医者さん」。動物が好きな人やコメディが好きな人には、特におすすめです！