なぜ褒め方・𠮟り方が特別支援教育で重要なのか

「叱る」は相手を良い方向へ導くためにかけることで「怒る」は感情を相手にぶつけることをいうよ。
行動の背景にある「困り感」を理解する
支援者にとって困った行動をしたとき、つい叱りたくなるかもしれませんが実は子ども自身もやりたくてその行動をとったわけではない場合も。
例えば、感覚過敏によるつらさ、言葉で気持ちを伝えられないもどかしさ、見通しが持てない不安さなど。
叱る前に、なぜその行動をしたのかを考えることが重要です。
褒め方・𠮟り方が行動に与える影響
特別支援学校の子どもたちは、言葉だけで状況を理解することが難しい場合も。そのため、教師の言葉かけや表情、タイミングが行動に大きく影響を与えます。
すぐに褒める→行動が定着しやすい
あいまいに叱る→何がいけなかったのか理解が難しい
声を荒げて怒る→不安だけが強まり、問題行動は改善されない(悪化する場合も)
小学校との違い(構造化・視覚支援の必要性)
特別支援教育では、褒めるとき、𠮟るときに「視覚的な支援」や「環境設定」が必要になる場合が多いです。
「よくできました!」+花丸カード
「静かに聞こうね」+耳のマークのカード
「あと5分でおしまいだよ」+タイマー
「ここで待つよ」+足型マーク
言葉だけでは理解が難しい子どもにも、視覚的な支援をすることで伝わりやすくなります。ただ叱るのではなく、望ましい姿を引き出すために必要な環境設定を行うことで、効果が最大化します。
特別支援学校での褒め方の基本
行動を具体的にほめる
「歩いてるね!」「片付けできたね」など、わかりやすい単語で端的にほめるといいですね。
タイミングは「すぐ・短く・わかりやすく」
子どもが良い行動をとったとき、すぐに褒めましょう。タイミングが遅れると、どの行動に対して褒められたのか分からず、良い行動が継続されない場合が。
また、長い文章で褒めると、言葉を聞くことが苦手な子にとっては内容を理解できない場合があります。何がよかったのか、短い言葉で伝えましょう。いつも指導しているキーワードを使うと、聞きなじみがあるので理解しやすいでしょう。(歩く・靴を履く・お片付けなど)
たまに、誉め言葉にバリエーションを!という話を聞くのですが、私の経験からは誉め言葉は1つ2つ程度で十分だと思います。逆に様々な言葉で褒められると、誉められたことに気づかなかったり、何か別の指示を出されたのかと誤解して混乱する可能性があります。
教員時代によく使っていた誉め言葉は「できたね(できましたね)」や「マル!」などでした。
視覚的な褒め方(カード・表情・ジェスチャー)
特別支援学校には視覚優位な子が多く在籍しています。そのため、言葉で褒めるだけでなく、花丸カードや笑顔、グッドサインなど視覚的にわかりやすく伝えることもおすすめです。
特におすすめなのが、ジェスチャーです。以前はオッケーマークを使っていたのですが、ある時、グッドサインを使いだしたところ、オッケーマークより手先が不器用でも真似しやすいからか子ども自身もできた時に使ってくれるようになりました。
子どもが自分の行動に対してうまくできたな、と思ったときに担任だった私に向かってグッドサインをしてくれたのです。他者から褒められるだけでなく、自分で達成感を感じた時にも使うことで自己肯定感を高めることにつながった良い事例でした。
成功体験を積ませる環境づくり
そもそも、子どもが達成できる課題でなくては成功はできません。子どもの実態をよく把握してちょうどよい難易度の課題を設定することが重要です。
また、集団活動の際は友達の前で発表する形式にして、先生たちや友達からできたことを称賛してもらいました。人に注目されることでやる気が出る子どもにはお勧めです。
褒め方の実例
聴覚過敏があった子へのほめ方
トイレ指導で便座に座っている子どもを応援しているときのことでした。運よくタイミングが合い、トイレが成功。私も興奮してつい大きな声で「できたね!」と言いかけたときでした。
大きな声が来ると気づいた子どもがびくっと身構えたのを見て、慌てて声のトーンを落として「できたね~!」とハイタッチ。
指導者もつい熱が入り、全力でほめたくなる時がありますが、本人に負担のない褒め方が重要だなと再認識した出来事でした。
子どものやる気を支える褒め方
国語算数の授業で、書字のプリントを行っているときの話です。手先が不器用で、なぞり書きでお手本からはみ出さないように書くことに苦手意識を持つ子でした。集中できる時間がまだ少なく、最初の数文字は丁寧に書いていても、次第に形が崩れていく。
私は、プリントの取り組みはじめの集中ができている時に「いいね、上手に書けてるよ」と言葉をかけてしばらく近くで見守りました。近くで見守っていることで、多少頑張ろうと思ってくれたこともあったのでしょう、いつもより丁寧に1枚のプリントを書き終えることができました。
すぐに私は「よくできました!!」と大きな花丸をつけて褒めると、すごくうれしそうな表情をしてくれました。
おそらく、最初の集中できているときではなく、集中が途切れてきた頃に「丁寧に書きなさい」と叱っていたら、子どものやる気はかなり下がっていたことでしょう。また、プリントができた時も、子どもが「できました」と教師に伝えてから確認をしに行ったのでは、あそこまでうれしそうな表情は見られなかったのではないかなと思います。
できていることを肯定する、タイミングよく褒めることの重要さを感じる出来事でした。
特別支援学校での𠮟り方の基本
叱る前に「環境」「課題」「指示」を見直す
子どもの問題行動の裏には、何かしらの環境設定の不備が隠れているものです。子どもにとって気が散る教室になっていないか、課題設定が難しすぎないか、指示が分かりにくくないか。
子どもが起こした問題行動の前後の状況をしっかり分析して見直してみるといいでしょう。私は、タブレット端末で授業風景を撮影し、自分で見直したり、他の教員に見てもらってアドバイスをもらったりしていました。
自分の不備を探すことは、時にしんどいことではあるのですが、そのまま続けても子どもへの指導がうまくいかないままなので、覚悟を決めて見直しましょう。
感情的に叱らないための工夫
体罰や不適切な言動が厳しく取り締まられている昨今、感情的に叱るのはかなりNG。子どもにとっても、長々と感情的に叱ってもただ怖い顔だけが印象に残り逆効果になります。
では、どうすればいいのか。いくつか工夫を紹介します。
・その子どもと1対1にならない。
第三者の目があることで、冷静な自分を取り戻すことができますよ。
・叱る前に深呼吸をする。
・低い声で普段と同じくらいの声量で叱る。
まず大きな声を出さないことで、感情的になりにくくなります。また、低い声を意識することで、普段よりも真剣さが伝わります。
・うまく伝えられそうにない場合は、無視して指導者を交代する。
状況によりますが、子どもがわざと怒らそうとして問題行動をすることも。そんな時は、リアクションをせずにスルーしたほうが効果的です。可能ならば、誰かに指導を変わってもらうとより冷静さを取り戻せると思います。
視覚支援を使った「伝わる叱り方」
褒め方と同様で、叱るときも視覚支援が有効な場合があります。私はよくバッテンマークを指で作り、伝えていました。あとは、少し怖い顔や首を横に振ることも。
叱るときにあまり、派手にカードとかを作って伝えると、逆にそれが楽しくなって悪化する場合もあるのでなるべくシンプルに伝えることをお勧めします。
行動を否定せず、代替行動を示す
「靴を脱がないよ」ではなく「靴を履きます」、「ものを投げないよ」ではなく「優しく置こうね」のようにしてほしい行動を伝えます。
否定の言葉が飛び交うと、だんだん関係がギスギスしてくるのでなるべくプラスの言葉を使うように意識していました。プラスの言葉を使っていると褒めるときにも、褒め言葉が出てきやすくなるのでおすすめです。
𠮟り方の実例
他害が出た時の言葉かけ
叱る場面というのはいろいろあるのですが、中でも一番注意しなくてはいけないのが、他害。
どれだけ勉強ができようと、言葉が話せようと他害があるだけで、就職の幅はかなり狭まります。
では、どういう対応をするのか。叱り方に関しては、子ども一人一人によって正解がかなり異なるため断言するのは難しいのですが、私はまず他害した児童を周りの子どもから離し「いけない」と一言伝えていました。低い声、怖い顔で。
それと同時に、他害を受けた子どもの状況確認と必要に応じて手当て、一連の流れを見ていた人に状況確認をします。
原因も子どもによって本当に様々でした。環境設定が悪かった場合、子ども同士の相性が悪かった場合、本人のコンディションが悪かった場合など。どれも再発防止に向けて手立てを講じました。
他害はいけないことなので叱りますが、理想を言えばそれが行われる直前に止めることがベスト。そのため、した後に長々と叱ることはあまりしませんでした。
お試し行動への𠮟り方
子どもは時に、この人どこまで自分の行いを許してくれるのか試すことがあります。あまりよくない行動だとわかっているけど、わざとその行動をして相手を試すのです。
そんな時に、大人が「あーなにやってるのー!!」なんて大きなリアクションをすると逆に喜ばれてしまう結果に・・・
そのため、お試し行動には大きなリアクションをせずたんたんと対応することが大切です。もちろんいけないことなので叱りますが、決して感情的にならずに冷静に伝えましょう。
荒療治の一種ですが、以前部屋の電気を消灯するいたずらに固執していた子どもへの対応で、叱るのではなく、その子が電気を消しに離席した瞬間に手を取り、みんなで踊るという対応をしたことがあります(笑)こちらの困惑している様子を見せないこと、電気を消すというこだわりを忘れるくらいインパクトのある出来事をぶつけること、この2つを意識した対応でした。当然その子は驚き、いたずらのことは忘れそのまままた席に戻りました。(一過性のこだわりだったため、次第にやらなくなりました。)
叱っている時の周りの児童への配慮
叱るということは、それだけで空気がピリッとすることがあります。そして、その空気を感じ取り自分が叱られているかのように受け取り情緒が不安定になる子も。
そのため、時には場所を変えて叱るという配慮が必要な場合があります。また、子どもの認知によっては、叱られている自分を見られることが恥ずかしいと思ったり、この子はいつも叱られているから立場が低い人なのだと子どもたち同士の中でランク付けをされたりすることも。
叱るときには周りの児童への配慮も忘れてはいけません。
保護者との連携で気を付けたいこと
家庭と学校で褒め方・𠮟り方をそろえる
褒められ方や叱られ方が家庭と学校で異なることで、子どもによっては混乱してしまうことがあります。本人に伝わる方法を共有して、なるべく同じ環境で伝えられるとよいでしょう。
叱った出来事を家庭と共有するときの言葉選び
我が子のマイナスな出来事を喜んで聞きたい保護者はいません。かといって事実を隠してもいいことはありません。起きた出来事だけでなく、それが起きた原因、本人にどのように伝えた(叱った)のか、今後の対応など、マイナスな出来事を次に繋げられるような建設的な伝え方ができるといいでしょう。
成功例の伝え方
成功例に関しては、大々的に伝えましょう。連絡帳でも面談の時にでも。
子どもの成長が保護者は一番うれしい報告ですからね。
「○○ができるようになりましたよ。おうちでもぜひほめてあげてください。」
と伝えていました。学校で褒められることもうれしいでしょうが、大好きな保護者に褒められることでさらにやる気が上がる子どもは多いです。
まとめ
いかがでしたか?意外と難しい褒め方と叱り方。
伝え方で子どもの姿が大きく変わりますので、ぜひ試してみてください。特に子どもにあった褒め方ができると、一気に子どもが成長すること間違いなしです!





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